DXの失敗事例と課題、成功のポイントを解説
国をあげたDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進により、多くの企業がDXに取り組んでいます。一方で、DXの推進が暗礁に乗り上げ、頭を悩ませている会社も少なくありません。当記事では、DX推進の失敗事例から課題を整理し、DX成功の秘訣を探ります。
DXの現状
DX(デジタルトランスフォーメーション)を取り巻く現状は、日々変化しています。政府によるDX推進によって、その必要性が理解され始め、いまや大手企業の83.2%がDXの推進・検討に着手しています(※一般社団法人日本能率協会調べ)。
他方、中堅企業でDXの推進・検討を行っているのは56%、中小企業では34.9%と、コストや人材不足などの課題もあり、各社でDX推進に差が生じています。
しかし、以前の記事『IT化と何が違う?DX(デジタルトランスフォーメーション)の基礎知識』『社内「DX」の上手な進め方』でも触れているように、生産性向上や少子高齢化社会への対応、老朽化したITシステムを使い続けることによる経済損失などから、企業のDX推進は避けて通れないものとなっています。
また、今後、至るところでDX化が加速することも予測されます。
事実、直接的に利益を生み出さない「バックオフィス業務」に関しては、以前からDXが注目されていましたが、こうした社会の動きと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が相まって、「営業業務」などの分野にもDX化への関心が高まっているのが現状です。
DX化の「よくある4つの」失敗事例
多くの企業が着手し始めているDXですが、日本においては、DXで成功している企業は数少ないと言われています。そのため、失敗事例は少なくありません。
以下はDX化の失敗談のうち、代表的なケースです。
事例1「ITツールを導入したが、逆に工数がかかってしまった」
DXツールを導入したものの、作業効率や生産性の向上につながらないという失敗談はよく聞かれます。導入したITツールを使いこなすために、むしろ、従来よりも業務の工数が増えてしまったというケースもあります。ITツールやシステムの導入自体が目的になってしまうと、こうした失敗を誘発します。
事例2「細々とした問題が浮上し、DX化が進まない」
いざ、DX化に着手しようとしたものの、DXの進め方・やり方がわからない、推進のための人材が不足している、上司の承認に時間がかかるなどの問題から、DX推進が頓挫してしまうパターンがあります。DX推進には、そのためのPDCAをまわして、プロジェクトを熟成させていくという姿勢が求められます。
事例3「部分的な改革だけで、DX本来の目的を達成できない」
DXの本来の目的は「市場での生産性や競争力を高める」こと、すなわち、先進的なデジタル技術を積極的に取り入れて、経営システムやビジネスモデルを変革することです。
そのため、一部の人間だけの取り組みでは部分的な改革にとどまってしまい、DX本来の目的を達成することはできません。
事例4「導入したシステムを適切に扱える人材がいなかった」
DXのために導入したITツールが十分に扱えず、DXが進まないという失敗談も、よくあるケースです。ITツールを導入しても、そのシステムを適切に扱える人材がいなければビジネスの変革はできません。むしろ、ツールやシステムの導入自体が無駄になってしまうこともあります。DX推進に向けては、IT知識のある人材が必要です。
失敗事例から浮かび上がる、DX化の課題
前途の失敗事例から、DX化を阻む要因は複数あることがわかります。木村情報技術が20代~50代のビジネスパーソンに実施したアンケート調査『企業のDXとウェビナーに関する調査』では、自社のDXが進まない・もしくは取り組んでいない理由として、以下の意見が多く寄せられました。
- やり方がわからない
- 会社の方針
- 取り組み始めてまもない
- 金銭的な負担が大きい
- DX化を推進する人材不足
しかし、このように散見する問題を掘り下げていくと、複数の問題が紐づく大きな課題に突き当たります。
その大きな課題には、次のようなものがあります。
経営者層の理解
先述したように、DX化は経営システムやビジネスモデルの変革を伴います。ゆえに、経営者層を巻き込んだプロジェクトの推進が求められます。この点が欠けていると、予算の分配をはじめ、人材確保(体制づくり)、各部署間の連携などがうまくいきません。 DX本来の目的達成には、経営者層がDXへの理解を深めることに加え、そのプロジェクトの具体的な目標や実施内容のもと、全社的にDXに取り組む方針を打ち出せるかが一つの課題と言えます。
DX推進の体制づくり
DX推進においては、問題を抱えることが問題なのではなく、問題の解決に至らないことが問題と言えます。
さまざまな課題を解決しながらDX化を図るためには、PDCAのフレームワークに沿って、DXをプロジェクトとして遂行していくことがポイントとなります。
そのため、専門チームの発足など、DX推進のための体制構築は、大きな課題としてあげられます。体制構築が十分でなければ、DXをプロジェクト化することはもちろん、PDCAをまわすことや人材の確保も難しくなります。
業務の把握と分析
例えば、DXツールやシステムが業務の効率化につながらない、部分的な改革にとどまっている、DXの推進内容が現場に寄り添っていない等の問題の根底には、現状の業務内容を可視化・分析できていないという課題が隠れています。
業務の手順を体系的に詳細までまとめ、業務課題を洗い出し、自社に見合ったDXを進めていきましょう。
DX成功の秘訣とは?「5つの重要ポイント
ここまで、DXの代表的な失敗事例と課題をお伝えしてきました。 DXの推進にあたっては、多くの課題があることは事実ですが、そこから成功の秘訣を探ることもできます。課題からDXの成功ポイントを拾い上げてみましょう。
ポイント1:全社的な取り組み
DXは一部の社員だけではなく、会社全体で協力し、全員がDX化の意識をもつことが求められます。経営者層の理解を得て、現場を引率する必要があるため、初期段階から経営者層の介入は必須です。また、全社的な取り組みによって、人材確保への対応も見えてきます。
ポイント2:長期目標の設定
目標設定や戦略は、DX推進の上で欠かすことができません。DXは一朝一夕ではうまくいかず、長期的な取り組みが要されることから、DXをプロジェクト化する際には、長期目標を設定した戦略を立てましょう。また、経営課題とデジタル技術を結びつけた戦略は、経営層がDXに理解を深めるきっかけにもなります。
ポイント3:業務の可視化
先述した通り、業務の可視化・分析ができていないことはDX推進の足かせとなりますが、逆に、業務の可視化はDXの成功につながります。
業務を可視化するメリットは、「業務改善に向けての現状把握」「業務課題の洗い出し」「課題への共通認識をもつこと」などがあり、こうした点はDXの筋道を立てる際にも非常に有効に機能します。
ポイント4:解決すべき業務課題の決定
解決すべき業務課題が明確であれば、どのようなDXツールやシステムの導入が必要なのか、どういった体制で取り組むべきかなどが見えてきます。そのため、業務を可視化した上で「解決課題を決めること」もDX成功のポイントになります。
ポイント5:ツールの適正な活用と運用
ツールやシステムの適正な活用・運用なくしては、DXを進めることはできません。しかし、失敗例でご紹介したように、ツールの導入を目的にするのではなく、解決課題に基づいた適正なツールを導入しましょう。さらに、業務効率化を促す上でも、ツールやシステム導入後の活用や運用方法についても検討しましょう。
木村情報技術では、DXに役立つさまざまなツールやシステムを提供しています。
なかでも、AIお問い合わせシステム「AI-Q」は、バックオフィス業務における生産性の向上や業務改革につながるDXツールとして需要が高まっています。
「AI-Q」は、パソコンの操作方法や経費申請の方法など、社内からの問い合わせに対してAIが自動で対応。質問者が回答にたどり着くまでの平均時間を従来の約1/4に短縮し、社内問い合わせ担当者にかかる負担や人件費を削減します。
さらに、「AI-Q」の活用によって、経験豊富な社員の暗黙知が明文化され、それらを会社の情報資産として蓄積できるため、知識を保有する社員の休暇や退職による業務の滞りの解消、社内の情報資産の管理・運用にも有効です。
DXの課題であるツールやシステム導入後の活用・運用については、木村情報技術が「AI-Q」の導入から運用までをフルサポートしています。詳しい資料のダウンロードは、こちらのページからどうぞ。