企業内の情報資産を利活用!「ナレッジマネジメント」とは?
DXが推進される現在、ナレッジマネジメントを目的としたAI活用が加速しています。しかし、ナレッジマネジメントとは一体どういう意味なのでしょうか?当記事では、ナレッジマネジメントの基礎知識と、デジタルツールを活用したナレッジマネジメントのはじめ方をご紹介します。
ナレッジマネジメントとは?
ナレッジマネジメントとは、個人や企業が持つ知識やノウハウを共有し、その利活用によってイノベーションを促進し、企業の生産性や価値を高めるための経営理論および管理手法です。
ナレッジマネジメントは、日本語では「知識経営」や「知識管理」とも訳され、野中郁次郎氏が論じた『知識経営のすすめ(ちくま新書)』によって広く知られるようになりました。
1990年代以降、経済の鈍化や少子高齢化など、企業を取り巻く環境は大きく変化し、企業競争が激化。従来の経営戦略の限界が叫ばれ、新たに「企業内部の資源」と「知識・デジタル経済」に注目が集まったことを背景に、ナレッジマネジメントは広がっていきました。
用途別、 4タイプのナレッジマネジメント
ナレッジマネジメントの提唱者である野中氏は著書のなかで、ナレッジマネジメントの用途として次の4タイプをあげています。
ベストプラクティスの共有(組織的知識資産集約と活用)/ベストプラクティス共有型
経験値の高い社員や有能な社員のノウハウ、成功事例など、ベストプラクティス(最善の方法)を情報システムによってデータベース化し共有。「業務効率の向上」や「コスト削減」「品質やサービスの向上」を図る。
専門知の共有(リアルタイムに組織知をネットワーク)/専門知ネット型
専門知識を持つ人材の知識やノウハウを集約し、「特定の課題の解決」や「企業の意思決定」に取り入れる。必要な時に個々人の専門的な「知」を集結させて、知の全体量をあげて対応することが核。
知的資本の共有(知識資産からの収益創出)/知的資本型
法的に保護されているか否かに関係なく、経済的価値に変えることのできる知識資産(特許、ライセンス、著作権など)を対象に、これらの知的資産を整備して、社内外で活用し、「収益」に結びつける。
顧客知の共有(顧客知による成長)/顧客知共有型
顧客との知識の共有、または顧客に対して継続的に知識の提供を行い、顧客との結びつきを強固にし、顧客満足度の向上、顧客の維持や事業の安定化を図る。また、顧客知の共有によって、顧客ニーズの発掘や新たな提案を行い成長の基盤とする。
顧客データの獲得と、製品の使用プロセスを通じた顧客の要望を吸い上げる仕組みが重要。
上記からは、ナレッジマネジメントによる次のメリットが浮かび上がります。
- 属人化していた知識を企業の情報資産として活用
- 業務効率化、業務改善、生産性向上
- 製品・サービスの質的改善
- 顧客満足度の向上
- 人材の異動への対応
- 人材育成の効率性の向上
しかし、ナレッジマネジメント本来の目的はこうしたことにとどまりません。
ナレッジマネジメントの目的とプロセス
現在、多くの企業がさまざまな目的を持ってナレッジマネジメントを実践しています。 次の3つは、その代表的なパターンです。
- 知識を用いて競争力を高める
- 知識を核に事業を再構成する
- 知識が商品そのものとなり、利益を生み出す
昨今、ナレッジマネジメントと言うと、前途したベストプラクティス型のナレッジマネジメントを思い描く人も多くいますが、それはナレッジマネジメントの一側面に過ぎません。
ナレッジマネジメントを広義に捉えるならば、その目的は「知識資産の利活用によって、企業の成長や競争力を高めること」にあると言えます。
「暗黙知」と「形式知」という2つの知識
さて、ナレッジマネジメントをさらに理解するうえで欠かせないのが、以下の「暗黙知」と「形式知」という2種類の知識です。
暗黙知
個人が蓄積してきた、言葉・数字・図などで表現できない知識やノウハウ。
形式知
言葉や数字、図などで表現できる知識やノウハウ。
企業の持つ知識の多くは「暗黙知」であり、ナレッジマネジメントでは「暗黙知」を「形式知」に変えること、すなわち、企業や個人の有する知識を明文化するプロセスが非常に重要です。
そして、そのプロセスをモデル化したのが、次に紹介する「SECIプロセス」です。
ナレッジマネジメントの「SECIプロセス」
ナレッジマネジメントの流れ
「SECIプロセス」は、暗黙知が形式知に変換されて「知識創造」が起こるナレッジマネジメントの流れを、4つのフェーズで表しています。
共同化(Socialization):暗黙知から暗黙知を得るプロセス
人と人とが直接的に交流することで、個人から個人へと暗黙知を伝える。 社内の歩き回りによる個人同士のコミュニケーション、社外における顧客やサプライヤーとの接触など、他者との共同体験を通じて暗黙知を得ること。
表出化(Externalization):暗黙知から形式知を得るプロセス
暗黙知を形式知に変換。言語化、図表化、マニュアル化によって、個人に蓄積された暗黙知を見える化する。近年、デジタルツールの進歩によって、表出化が加速している。
結合化(Combination):形式知から形式知を得るプロセス
形式知と形式知を結合。すでにある形式知と自分の持つ形式知とを合わせて、新たな形式知を生み出す。この段階で形式知が体系化され、企業の情報資産となる。
内面化(Internalization):形式知から暗黙知を得るプロセス
自己の内面において、形式知を暗黙知に変えること。具体的には、組織によって形式化された知識を、自身の知識として取り入れること。
このプロセスを繰り返すことによって「知識創造」をし、企業の成長を促していこうというのがナレッジマネジメントです。
SECIモデルの実行に必要な「4つの場」
しかし、SECIプロセスの実行には、いずれも知識を共有する「場=皆が集まり、知を創る場所」が必要であり、その「場」には次の4つがあります。
(1)創発場
共同化(暗黙知から暗黙知を得る)に適した「場」。社内の歩き回り、社内の休憩室での雑談、顧客との直接的な接触などが創発場となる。
(2)対話場
表出化(暗黙知から形式知への変換)が後押しされる「場」。
例えば、グループミーティングやプロジェクト会議など、個人が対話を通じて暗黙知を言語化したり、概念化したりする「場」。対話場は、情報システムを介して創出することも可能。
(3)システム場
結合化(形式知から形式知を得る)が促進される「場」。
グループチャットやSNS、AIチャットボットなど、デジタルツールを利用してシステム上で形式知を共有・編集・再構築する。
(4)実践場
内面化(形式知を暗黙知へと変換)に適した「場」。研修や実習、展示会、セミナーなど。リアルとオンラインの両方に実践場がある。共通のサービスやスキルの提供が求められるサービス業などが重視する傾向にある「場」。
このように、さまざまな「場」から知識を創出していくことが、ナレッジマネジメントの実践にとつながります。
ナレッジマネジメントのはじめ方
しかし、COVID-19感染症拡大やDX推進の影響が強まっている今日、前途した「場」の多くがオンライン上へと移行しています。そのため、今後、ナレッジマネジメントの実践には、ITツールの活用が必然的となります。
木村情報技術では、ナレッジマネジメントに役立つ「AI-Q」「AI-Brid」「AI-Switch」などのAIシステムを取り揃えています。
AI-Q
「AI-Q」は、24時間365日AIが対応する、マルチデバイス対応のAIお問合せシステムです。業務マニュアル、社内PCの操作方法、社内書式の検索などの質問にAIが素早く回答し、業務をサポートします。利用者の活用を通じて「AI-Q」に社内の知識をストックすることで、属人的になりがちな問合せ業務のナレッジを共有することが可能です。
AI-Brid
「AI-Brid」は特性の異なる2つのエンジン(1問1答(FAQ)型AIと文書検索型AI)を同時活用し、あらゆる質問に対して効率よく的確に回答するAIシステムです。
複数のツールから横断的かつ網羅的に情報を検索できるため、蓄積された膨大な形式知から、いつでも誰でも必要な答えを得ることができます。
まずは、ナレッジマネジメントへの理解を深めるとともに、自社にどのようなナレッジマネジメントツールが必要なのかを考えてみましょう。
参考:『知識経営のすすめ(野中郁次郎/ちくま新書)』