Patient Centricity時代の戦略構築を力強くサポートする
電子カルテ定性データ調査システム「Patient Journey Visualizer」

近年、医療業界や製薬業界では「Patient Centricity」が重視されています。Patient Centricityとは、患者の潜在的なニーズや希望、課題を深く理解し、それに基づいて医療や医薬品の価値を最大化するアプローチで、その基本は患者の声に耳を傾けることです。

医療業界でこの考え方が重視されるようになった背景には、医療ニーズが多様化し、情報へのアクセスが向上したことで、患者中心の医療サービスの提供が不可欠になっていることがあります。一方の製薬業界では、新薬開発の成功率が高くないことや、患者の治療中断や服薬不遵守などがますます課題になっており、治療効果の向上とブランド価値の最大化にPatient Centricityは欠かせないものになっています。

製薬企業がPatient Centricityを実践することで、患者の体験価値や満足度が高まり、結果的にブランド価値が向上します。そして最終的には、企業の利益向上にもつながります。

メディカルマーケティングにおけるPatient Centricityの実施には、患者のインサイト収集と活用が課題です。この記事では、その課題解決を支援する新しい手段「Patient Journey Visualizer」の特徴や具体的な活用方法を詳しくご紹介します。

「Patient Journey Visualizer」とは?

「Patient Journey Visualizer」は、AI・生成AI活用の研究・開発を手がける木村情報技術株式会社と、病院の経営支援・運営支援を手がける株式会社ユカリアが共同開発した、製薬企業向けの電子カルテ定性データ調査システムです。

このシステムは、ユカリアが保有する中小規模病院32施設の電子カルテデータ約110万件と、木村情報技術の技術をかけ合わせています。電子カルテに含まれる、患者の検査値や処方薬剤、医師所見・看護記録・薬剤記録などの定性テキストデータを、お客様のニーズに応じたデータセットとして提供します。検査値や処方薬剤は視覚的に理解しやすいグラフ形式で表示します。

製薬企業のブランドマネージャーやマーケティング担当者が、新薬の上市前や市場調査前後に利用することを想定しており、現状分析や仮設立案を支援します。また、MR(医療情報担当者)の研修資料作成のベースとしてもご利用いただける、強力なサポートツールです。

開発の背景

ユカリアが保有する電子カルテデータには、定量的なデータだけでなく、定性的なテキストデーアも含まれており、製薬企業がペイシェントジャーニーを作成する際に非常に役立っています。

ユカリアには、「1Patient(ワンペイシェント)」という名称で、ペイシェントジャーニーを一例ずつ提供するサービスがあります。しかし、一例ずつ手作業で作成されていたため、大量のデータを迅速に提供することが難しい状況でした。そこで、より多くのペイシェントジャーニーを手軽に提供できるように開発したのが「Patient Journey Visualizer」です。

多くのペイシェントジャーニーを見る意義

Patient Centricityは単に患者さんの治療を行うだけでなく、個々の患者さんの声を聞き、個々の患者さんが望む結果を理解し、それに基づく個別化したケアを提供することを目指しています。

患者さんの治療はさまざまな合併症や前治療歴、異常な検査値の出現、患者さんの希望・都合などにより変化していきます。標準的な治療だけ見ていては、この変化に気が付くことができません。

多くのペイシェントジャーニーを見ることで、この変化に気が付くことがPatient Centricity実現のためのヒントになるのではないでしょうか。

ユカリアの電子カルテデータベースの強み

レセプトデータやDPCデータ、電子カルテデータなどを扱う企業は他にも存在します。しかし、病名や検査値、薬剤名といった基本的な情報は取得できても、医師の所見や看護記録などのテキストデータを取得できるのは、ユカリアのデータベースの大きな強みです。

病名
検査値
薬剤
テキスト
その他
A
×
×
  • 保険組合由来のデータのため、高齢者のデータは含まれない
  • 請求に用いる情報のみが読み取れる
  • 傷病+診療行為(処方、検査、処置)の分析が可能
  • 患者の病態に関する情報は含まれない
B
×
  • 検査値はDPCデータとは別に入手しているため、検査値が紐づくわけではない
  • 傷病+実施内容(処方、検査、処置)に合わせて、一部のアウトカム(様式1の項目)情報と一部の検査結果を含むため、患者の病態が把握できる
C
×
  • 電子カルテ由来のため、検査値は含むものの、テキストデータは含まれない
ユカリア
  • 中小病院が中心
  • 全ての医療機関からテキスト(医師所見、看護記録等の定性情報)を収集しているため、治療実態を把握し、患者さんを深く理解できる

ユカリアが保有する電子カルテデータの元となっている中小規模病院は、かかりつけ医のように通院する患者が多く、長期的なデータが蓄積されているため、推移や傾向を深く分析することが可能なことが特徴です。また、定量データだけでなく、医師の所見や薬剤記録、リハビリ記録などの定性データを併用した分析も可能です。

テキストデータからは、さまざまな情報が読み取れます。たとえば、患者の生活習慣について、ほとんど運動をしていない、毎日間食をしている、といったことがわかります。また、アドヒアランスについては、服薬の有無以前に薬をシートから取り出せていない、などの課題が読み取れます。さらに、レセプトデータでは把握が難しい、前医の治療内容や診断に至った主訴、「症状(痛み)よりも眠れないことが辛い」といった患者の心情も知ることができます。こうした情報を活用することで、より具体的な対策の策定が可能になります。

現在、ユカリアのデータベースは、中小規模の病院のものが中心ですが、今後は大規模病院のデータも取得していく計画があり、さらに強力なデータ基盤となることが見込まれます。

Patient Journey Visualizerの利用イメージ

検索画面(図1)では、疾患名や薬剤名、検査値、性別、またテキスト検索でも症例が抽出でき、競合製品も検索可能です。

(図1)

検索結果画面(図2)では、上段に検査値と投与薬剤がグラフで表示され、いつ、どのタイミングで薬剤が投与されたのか、または切り替えられたのかを、視覚的に確認できます。

下段には、医師所見や看護記録、バイタルサインなどのテキストデータが表示されます。ここから、医師がなぜ自社製品を選び投与したのか、あるいはなぜ切り替えられたのかが読み取れます。また、患者の心情や、医師と看護師の実態に即したやり取りをも閲覧可能です。

※個人が特定される情報はすべて伏せられており、病院名も匿名化されています。

(図2)

適したデータセットで、検索精度を速度を向上

Patient Journey Visualizerは、ユカリアが保有する約110万件の電子カルテデータを活用していますが、データ量が多いため検索時に動作が遅くなることがあります。そこで、実際のご利用の際には、お客様が指定した症例群に対象を絞り込み、不要な症例群は事前に除外します。これにより、検索精度と速度を向上します。

競合品からの洞察

自社製品だけではなく、競合の製品が使用されている症例を閲覧いただけます。自社品ではなく競合品がどのような判断で使用されたのかを見ることは大きな学びになります。上市前の場合は競合品の処方動向の確認に有用です。

定型補助解析機能も搭載

すべての定性情報に目を通すのは大変です。そこで、定性分析を補助する解析機能をご用意しています。この機能では、薬剤処方の前後で現れるキーワードを解析し、関連する疾患や患者の行動、症状の違いなどを見つけ出し、どのようなキーワードで検索すれば違いが見えるのかをサポートします。(有償オプション)

投与前
投与後

Patient Journey Visualizerが補完する「患者中心」のメディカルマーケティング

Patient Journey Visualizerは、マーケティングのPDCAサイクルにおける現状分析と仮設立案で特に力を発揮し、現場の実態を基にした気づきを提供します。

電子カルテには、医療の現場で実際に起こっている事実が記録されています。通常、MR(医療情報担当者)が医師との面談で処方状況を把握し、それを会社に報告します。こうした人を介した情報伝達では、内容が徐々に薄れていくことがあります。そのため、バイアスのかからない元情報にアクセスすることが重要です。

製薬企業のマーケティング担当者が行う定性的な調査には、デプスインタビュー(1対1のインタビュー)、グループインタビュー、アンケートといった手法があり、それぞれメリットとデメリットがあります。

「Patient Journey Visualizer」は、そのデメリットを補完し、より正確な判断と戦略構築をサポートする新たなツールとして、良い相互作用を生み出します。

「Patient Journey Visualizer」について資料や詳しい説明をご希望の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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