「求められるICFを意識したディテーリング」

介護福祉士の中浜崇之さんは、2016年8月15日にTBS系列で放送された討論バラエティ番組『好きか嫌いか言う時間SP』に出演した際に、司会者から介護職員のモチベーションがどこにあるのか尋ねられ、次のような発言をしました。

「介護の仕事って、自分の人生を最期まで自分らしく生きるために何をするべきか。どうやって死んでいきたいか。どういう姿で最期を迎えたいか。ご本人の思いと家族の思い。それを実現するためのひとつとして、お風呂に1人で入れないからお手伝いをする。例えば、孫とディズニーランドに行きたい。行ってもらうためにケアスタッフとして何かできるのか。車で行くのに1時間かかるからその間座っていられるようにリハビリがんばろうね。そういうことで一人ひとりの思いが実現できる。そこに私はモチベーションを持って仕事をしている」

この発言は、実にICF的です。ICFについては、連載している「今週の提言」(医薬経済社のサイト)にも紹介しましたが、ICFとは、図のように生活機能と環境・個人因子を相互的に捉えながら健康状態を診ていく考え方です。機能障害があって活動が制限されている状況を、医療人のサポートや福祉器具の活用、建物のバリアフリー化により制限や制約が少なくなり、患者さんの"健康状態"を上昇させていきます。

ICF図

要介護状態が悪いため、ディズニーランドに行くのは無理と考えるのではなく、お孫さんとディズニーランドに行ってもらうためには、どのような治療やサポートをすれば良いのかを考えるのがICF的な考え方です。
MRも、自分が扱う薬剤が患者さんの▽生命レベル▽生活レベル▽人生レベル――にどのような影響を与えることができるのか。そのことが、患者さんが再び実現したいと願っている活動や社会参加等について、どのようなメリットを与えられるのかを医師や薬剤師などと情報交換した上でディテーリングすることが求められています。
ICFは、私が約5年前に出版した『優秀なMRはどのようなディテーリングをしているのか?』の中で提唱したOne Patient Detailing(OPD::ある疾患における、自社製品に限らない個々の症例に基づくディテーリング)と、とても相性の良いツールです。ぜひ活用してみてください。

なお、OPDに関する書籍を年内に木村情報技術から出版する予定です。